―― その舟を漕いでゆけ お前の手で漕いでゆけ お前が消えて喜ぶ者に お前のオールを任せるな
その舟は今どこに ふらふらと浮かんでいるのか その舟はいまどこで ぼろぼろで進んでいるのか
流されまいと逆らいながら 舟は挑み 舟は傷み 全ての水夫が恐れを成して逃げ去っても
その舟を漕いでゆけ お前の手で漕いでゆけ お前が消えて喜ぶ者にお前のオールを任せるな―― (「宙船」中島みゆき)
翌14日、穏やかに晴れた成人の日。式の帰りだろう華やかな衣装に身を包み、穏やかな表情の新成人にすれ違う。対照的ににちがく勢の心身の疲労はピークに達し、責任と執念だけが彼等を支えている。何だか悲喜こもごも甚だしい・・・。
迎えた足立学園にも苦戦を強いられる。立ち上がりも悪く、不利な状況が依然として続く。布施先生の渇を受け、22点差を8点差まで縮めるほどの攻守を見せる。本来のにちがくバスケを取り戻したか。しかしその刹那、再び窮境に立たされる。8点まで詰め寄りながらたたみかけられなかったのは、悲しいかな、精根尽きたか、実力か。神風も吹かず、火事場のくそ力もなく終了を告げるブザーが無情にも鳴り響く。もう?やっと?・・・終わった・・・?
18時頃に皆、学校に戻ってきた。昨日と同じ、いや昨日よりもっと重い空気。生徒達は自主的にビデオを見、試合を反省する。勝ち試合ならば何度見ても痛快だろう。しかし次回に繋げるためとはいえ此度は傷口に塩をすり込まれるように感じるはず。21時近くまでそのミーティングは続いた。
久我山戦において。「自分を出してください!」「自分も!」「自分も!」という1幕があった。劣勢であれど更に自分を追い込んでいった選手達。
怪我等の諸事情で出場できず悔しさからか解散後、10時過ぎまで残ってシューティングしていた選手幾名。
ベンチ入り出来なくとも共に戦おう、苦しさを共有しようと喉も枯れんばかりの応援団。
先があることを信じてスカウティングに余念なき1年生。
capの指示の元、試合の空き時間はチームで有意義にな活用し、どこよりも準備等怠らないにちがく勢。
テレビには映らない、観客の目にも入らない舞台裏の1シーンにこそチームの本質が詰まっている。
新チームになって初めての公式戦は8強入りを果たした。当初の4強という目標には今一歩及ばなかったが東京都8強/328校という成績は評価に値する、と私は思っている。本意に反した結果でも胸を張って欲しい。勿論、これまでの実績云々を言い出したらきりがない。生徒等の胸中は複雑だろうが堂々たれ。勝って見る世界は格別でも負けたからことによって得られることもあるはず。きれい事かもしれんが的は外していないよな?大事な事は負けを真摯に受け止め、その負けをどう活かしていくのか、ということじゃないの? 「負けたことがあるというのがいつか大きな財産になる」と山王工業の監督も言ってたし。東北魂を持った布施先生の指導のもと、常に挑戦者の精神で臨み、泥臭く、鉄壁の守りで勝ちを掌中に収めていく方が君たちらしいよ。