風薫る5月、と謳うに相応しい日にインターハイ予選が東京都内各所で始まった。にちがくは初戦の大切さとこの公式戦の意義性を噛みしめ、都立葛西工業高校との試合に臨んだ。終始、主導権を握り相手を圧倒し、終わってみれば178:29とこれまで見たことのないスコアで無事、白星発進となった。試験期間中ということもあって勉強との両立に苦慮したことと思うが、そこは学生の使命、万障繰り合わせたことと推察する。
私は2階ギャラリーで観戦していると脇では他校の選手が身を乗り出してにちがく戦を見ている。終始「すげ~」とか「おお~」といった言葉を口にし、自分たちの反省をそっちのけである。にちがくのプレーはやはり人目を引くもんなんだと思う一方、相手校の3年生の心中を推し量ってしまう。彼等はこれで引退なんだよなと思うとどのような3年間であったのか、そしてこの一戦への思いはと失礼ながら気にしてしまった。負けの色が濃く映りながらも気持ち折れることなく、最後のブザーが鳴り響くまでゴールを目指しボールを運ぶ姿に目頭が熱くなる。にちがくもそれに応えるべく、ギアはトップのまんま。大きなお世話な気持ちを芽生えたのはかつて顧問を務めていたチームと重なってしまった所以のことと一笑に付して戴きたい。
平成が始まって間もないころ社会に「企業戦士」と呼ばれる戦士が溢れた。彼等は「24時間戦えますか」を合い言葉に、家族そっちのけで戦いに明け暮れていた。敵は何だったのか、勝敗の行方は?ついぞ聞いたことはない。もし現代において同じことを聞かれたら言下に否定されるのは間違いない。
では問い方を変えて「24時間バスケできますか?」としたらどうだろう。諸手を挙げて決意を表明する者、躊躇する者、刹那思案する者・・・等々。にちがく勢はこのインターハイ予選を何処よりも重く、貴重なモノと捉え、日々の練習を積んできた。余暇と称されるような時間はなく、全ての時間をバスケに費やした。現代科学の前では「量より質」が重視され、短時間での効率・合理的な練習が励行されているだろう。心身への負担を軽減させ、上手に時間を紡ぎ出し、有意義な人間的活動を行う・・・。時代錯誤と言われようが昭和生まれの私にはそれは時に迎合や妥協からなる甘やかしに思えてならない。特に高校生時代は。全否定はしない。ただ練習を受験勉強に置き換えるとわかりやすい。「今日は○○までやったから」「もう時間だから」で受験勉強はせず、納得いくまで明け暮れた。少なくとも頭の悪い私はそうすることが合格への最善策と信じていた。結局、どれだけやったのかが高校生の場合モノを言うと思う。今ここで指導論を打ち立てる気なぞ毛頭ないが、人生80年とも90年とも言われるこの時代、高校3年間バスケ一色だったと、やりきったと言える程に正対して欲しい。それこそ寝食忘れ、夢の中でも練習されたし!と願うことは押しつけなんだろうか。
徳川家康の遺訓とされるが私には『長い坂』(著:山本周五郎)の主人公、三浦主水正の呟く言葉として印象的である。「人の一生は重き荷を背負うて、遠き道を行くが如し、急ぐべからず」。解釈は要るまい、各々で解釈されたし。恐らく同じ所に辿り着くはず。
にちがく勢にとって道はまだ、遠く険しい。プレッシャーやジレンマを背負うて挑戦者の姿勢で臨み、星を積んでいくしかない。「心技一体」という部訓が画餅で終わるか、インターハイへのパスポートになるかをはっきりさせる上でもバスケ三昧の生活を堪能されたし。にちがくの子は24時間直向きにバスケしていますか?愚問ですよね。
次は26日、都立南葛飾高校(通称:南葛)との対戦! 9:00! 広尾高校でトスアップ! Don’t miss it !