祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず ただ春の世の夢のごとし
たけき者も遂には滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ
『平家物語』の冒頭を試合終了後にふと思い出した。何とも言えぬ虚脱感のようなものに選手達は見舞われているに違いないと胸中を慮らずにはいられなかった。上には上がいることをまざまざと見せつけられた試合だった。
1回戦勝利の余韻に浸る間もなく、気持ちを切り替えて2回戦の時を迎える。対戦相手は身長208cmの留学生を擁する、兵庫県の報徳学園高校だ。下馬評は分からない。しかし広島皆実高校を破ったという自信と勢いは今日も発揮してくれるだろうと祈念の中トス・アップ。ところが昨日とは打って変わって攻められない。シュートも入らないしリバウンドもとれない。誰しもが「あれ?」と思ったのではないか。日学が日学のプレーをしていない、させてもらえない、と。苦しい展開で迎えた2P、漸くシュートも決まりはじめ本領発揮か、リズムを掴んだかと思うのも束の間、敵は留学生を軸にそれを阻む。20点以上離された時間もあったが地道ながらも確実に1ゴールずつ返し5点差まで追い上げる。しかし5点の壁は嘲るように高く立ちはだかり越えることを許してはくれなかった。後半は47対29と18点ビハインドで始まる。一矢報はむとディフェンスで魅せチャンスを狙う。焦りや疲弊が募ったであろう、しかし手を下げることはせず、低いスタンスの基本の姿勢で相手を迎え撃つ。ハーフの2-3ゾーンやオールコートマンツーマンで相手を翻弄しながらも今ひとつ、いい流れを呼び起こせない。
非情にも時間は刻々と過ぎてゆくも依然として変わらない点差のまま最終ピリオド。何とかして点差を縮めんと執念の籠もったディフェンスでターンオーバーを誘発する、8番が連続で3Pシュートを連続で決める。観客席から思わず感嘆の声が漏れる。
最終スコアは108対81と残念ながらベスト8の成績を収めること、明成高校と戦うという目標は遂に叶わなかった。しかし劣勢の中でも「にちがく」の武器であるディフェンスで勝負したことゴールへの執着心がブザーが鳴るまで途絶えることがなかったことは敬服の外はない。
日学バスケ部が守り続ける「心技一体」という言葉の持つ意味をもう一度、一人一人が咀嚼してウインターカップ予選に繋げる。