「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
どこかで耳にされたことがある方も多いでしょうか。歌人・俵万智さんの1987年に発表された短歌です。
当時としては斬新な口語表現を用いたり、流行語を取り入れたりして女心を描き、その軽さが若い女性たちの圧倒的な支持を受けました。
中学2年生はこの秋、短歌を学んでいます。
正岡子規や石川啄木たちを鑑賞する前に、俵万智や寺山修司といった現代短歌から鑑賞しはじめました。
初回は「○○○記念日」としまして、
○○○は何が入るかな?これがわかる人がいたら、女心を掴める人!と言ってみましたら、
あるクラスでは「サラダ記念日」を知っている14歳がいたことに驚き、あるクラスでは
「角煮!」
「はずれ!君の好物?」
「酢豚!」
「違う!酢豚記念日って・・・残したいか?それ」
「・・・チャーハン!」
「違う!それもかわいくないなぁ・・・記念日作りが大好きなかわいい女の子を想像しなさーい」
「餃子?」
「・・・中華ばっかりだね。いえ、違います。もっと爽やか」
「じゃあカレー!」
「違う!でも惜しい!」
「惜しいんですか?爽やかじゃないじゃないですか(笑)」
なんて言いながら・・・
「カレー記念日」を惜しいと言ったのは、実は作者は『短歌をよむ』という本の中で、「現実には7月6日ではなかったし、素材はサラダでもなかった」と。興味深いエピソードを打ち明けているのです。
驚くべきことに、「いいね」と言って微笑んだ恋人との時間、そのときの手料理は「カレー味の唐揚げ」だったそう!
そして、七月六日でもなかった、と。
今は、明治から現代までの短歌の鑑賞も一通り終わり、生徒たちが短歌の制作をしています。
「現実」と「虚構」、
短歌は現実を忠実にありのままに写すだけでなく、伝えたい思いを表現するために時間をかけて言葉をさがします。
「カレー味の唐揚げ」を「サラダ」にしても、節分のお豆しか思い浮かばないような「二月三日」を、爽やかな「七月六日」にしてもいいのです。
伝えたいのは「事実」ではなく作者にとっての「真実」ですものね。
生徒たちの作品が完成するのが楽しみです。