高校3年生の大学入試直前講習も1月末をもって一段落し、あとは生徒達が今まで培ってきた実力を遺憾なく発揮して、志望する進路を実現してくれることを願うばかりです。私も国語の授業と学年進路担当として三年間携わり、文系から理系まで全ての生徒を教えることができました。
この学年は、入学当初から2021年の大学入試改革を最初に経験する学年として意識され、本校でも新たな試みをスタートさせました。例えば、本校の創発学をさらに高校でも徹底させるため、新規教材導入とClassiなど情報ソフトの活用などを開始しました。教科指導でも私の担当する現代文では、高校2年から「大学入試共通テスト」第1問目の記述対策として、文章の要約文作りと記述問題にひとり一人添削をして返却することを繰り返しました。ところが、改革の目玉である「大学入試共通テスト」について、文科省から次々と出題内容の変更が発表され、国語は、事前に行われた施行調査問題から記述式の問題が削除されてしまいました。また、それに伴う選択肢の難化など、予想される「共通テスト」の対策として見当をつけることが難しくなってきました。
そんな矢先、Covid19感染拡大による緊急事態宣言発令です。3月から5月の連休前に進路で企画していた「春期講習」、「大学志望理由書の書き方講座」、「入試ガイダンス」、各大学の入試担当者を本校にお呼びして開催する「学内大学説明会」、そして各人で参加するオープンキャンパスなど、全ての企画が中止となり、まさに「天を仰ぐ」とはこのこと。しかし、高校2年の3学期から3年の1学期という受験に向かう大事な時期に生徒達を放っておくわけにはいきません。自宅学習でどのようにカバーするか、学校を挙げてのオンライン授業で様々な工夫が行われました。高校のi-pad導入を来年度に控え、私達教員も新たな学びを経験した強烈な3ヶ月だったと思います。
そして、6月の学校再開。まだまだ感染症に怯えながらの再開ですから、授業時間も30分に短縮、モジュール講習も遅くまではできません。私は、朝7時20分から50分間私大の過去問演習を行いました。生徒たちは、予習をして朝の眠い身体を布団から引き剥がして、まだ夜が明けきらないうちに家を出て講習に参加してきたのだと思うと、私自身も普段の授業以上に緊張し熱がこもります。幸い12月の最後の講習までに、都内の私大の問題をひととおり演習することができました。
この秋から冬にかけて、通常なら1号館1階の3年生の各教室では夜遅くまで居残って受験勉強に励む生徒達の姿が見受けられたはずです。年が明けて再度、緊急事態宣言が発令され授業は10分短縮となり、もちろん暗くなるまで居残っている生徒はいません。高校3年の受験期にある生徒達にとって、学校で自由に勉強できる時間や空間が制限されているのですから、確かに厳しい1年であったにちがいありません。しかし彼らはこの不条理の中、飄々として逞しく、置かれた環境に不満を感じさせる素振りも見せないのです。ですから、わたしたち教師も、満面の笑みを浮かべて報告に来てくれる生徒達を待ちながら、今は夜明け前の一番寒い時間を過ごすことにしましょう。
東の空 西の空