日本学園の校門をくぐると、校祖杉浦重剛の像がどどーんと建っている。左手に帽子、右手にステッキを持った、ダンディなお姿なのだが、幼児には怖いらしい。
もう10年ほど前になるが、夫に連れられて日学祭にやってきた息子が、「あの人だあれ…?」と聞くので、この学校をつくった人だよ、と教えたついでに、夜うるさい時には「杉浦先生がステッキ持って追いかけてくるよ」と言ったら本気で怯えていた。杉浦先生すみません。非常に効き目がありました。
そんな杉浦先生が、年に一度、お色直しをする機会がある。日学祭である。
恒例というわけではなく、ここ数年の話なのだけど、杉浦先生にも日学祭を楽しんでいただこう!と、当時の実行委員会の生徒たちと、ハッピを着せたり、帽子をかぶせたり、その年のテーマに合わせて着飾っていた。
ミスコン(ミスターコンテストではない、ミスにちがくコンテストである)に出た生徒が、せっかくだからと杉浦像と一緒に記念撮影をしている姿も見たことがある。
普段は意識しないけれど、校門を行きかう生徒たちを常に見守り、時には一緒に遊んでくれる、杉浦像はそんな存在だ。
残念ながら、昨年に引き続き、今年の日学祭も早々に中止が決定されている。杉浦先生の、年に一度のおめかしは今年も見送りだ。
杉浦重剛の言葉に、「まさかのときに役に立つ人間になれ」というものがある。学校行事は「まさかのとき」ではないのだけど、行事の時に思わぬ力を発揮してくれる生徒というのが必ずいる。
勉強やスポーツで目立つ存在でなくても、輝ける場所があり、能力を発揮できる機会がある。それがにちがくのいいところだなと思うし、男子校の面白さでもある。
今、楽しめることを見つけ、形にして、共有する。そんな経験をたくさん積んでほしいと思っているし、生徒たちとそれができることを私自身も楽しんでいる。
※ 凛々しい杉浦重剛像。校門入って正面右手にあり、登下校の生徒を見守ってくれています。
下の写真はある年の日学祭バージョン。たまにならきっと杉浦先生も許してくれるはず。