現在コロナ禍の影響もあるがガソリンなどの 石油製品の値段が高騰しています。 石炭やガソリンなどの石油製品は、燃焼すると温室効果ガスである二酸化炭素を排出するので地球温暖化の一つの起因とも言われています。また、 君たちもニュースなどで聞いて知っていると思いますが 10月末にロンドンで「気候変動枠組み条約締結国会議( COP26) 」 が開かれ、産業革命前からの気温上昇を「 1.5 ℃」に抑える努力をすることを合意したと報道されています。この目標の達成 では、ガソリンなどの石油製品の脱炭素化が求められ、世界の二酸化炭素の排出量を 2030 年までに2010 年比で 45%にし、2050 年には実質ゼロにすることが 求 め られていました。このCOP26 の議論のもとになる報告書を出したのが IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)であり、そのもとになった「コンピューターによる地球の気候シミュレーション方法」を 世界に先駆けて切り開いたのが 、2021 年度に「ノーベル物理学賞」を受賞した真鍋叔郎さんでした。 真鍋さんは、日本人で28 人目、物理学賞としては12人目の受賞者でした。
真鍋さんの研究は、2007 年にノーベル平和賞を受けた IPCC の温暖化報告書にも生かされています。 2015年にCOP21が開かれたフランスのパリ北駅には、真鍋さんの功績を称えるために真鍋さんが使った「気象学の数式」がいたるところに 掲げられ、今でもパリ北駅には掲げられています。今年 8 月の I PCC 報告書では、「温暖化の原因は、人類が工場や発電所、家庭など様々な 場所から出す二酸化炭素などの温室効果ガスであること」に「疑う余地がない」と断定しました。
<2015年に温暖化防止に向け大きな転機となった COP21という国際会議が開かれましたが、このCOP21が開催されたフランスのパリ北駅には、真鍋氏の功績を称えるために、真鍋氏が使った気象学の数式がいたるところにいまでも掲げられています。>
ノーベル物理学賞は、地球温暖化などの環境分野に授与されるのは初めてでした。 近年、地球環境問題が深刻化している中でノーベル賞も環境問題に注目せざる得なくなったのかもしれません。1995年に窒素酸化物が「オゾン層」の破壊をしていることを唱えたことで 「ノーベル化学賞 」が、 2007 年に、地球温暖化について映画「不都合な真実」で世界的な啓蒙活動を行ったことで「ノーベル平和賞 」が贈られてきました。今回は、地球温暖化が進んでいる中で、早急に脱炭素社会を実現しなければという「待ったなし」の状況での授与でした。 ノーベルの遺言では、「人類で最も大きな貢献をした人に賞を贈る」とされています。
今、私たちの周りを見ても、ここ近年の 局地的な集中豪雨や台風の大型化による自然 災害が頻発していることから 地球温暖化は、確実に進んでいます。 気候変動が進めば、豪雨や台風といった自然災害が深刻化し、早急に二酸化炭素を減らすなどの脱炭素社会を目指さなければ、 熱中症や熱帯病などの流行が増えると予測されています。
真鍋さんは、ノーベル賞を受賞したとき、若手研究者に対して、研究には「好奇心が大事」 と述べています 。 「やはりこの研究がもとは好奇心からスタートした。だから、今の日本でも世界でも、はやりの研究テーマでコンピュー ターを使って結果を出すという形でやっているが、本当におもしろい研究は好奇心から出た研究が大事だ。日本の若い人たちも好奇心ばかりで研究をしていたのでは研究費が出てこないかもしれないが、そこのバランスを上手に考えてやらないと、時代の流行に流されておもしろい研究は絶対にできない。そういうところに焦点を置いてやることが重要だ」 と。
これは、君たち高校生にも言えることだと思います。日常生活の中でどう好奇心を持ちながら学んでいくかが重要です。
ちなみに、来週の12/10 は、 ノーベルの命日 であり、コロナ感染がなければ スウ ェーデンのストックホルム で盛大にノーベル賞授賞式が行われるはずです。今年は、残念ながらオンラインによる授賞式です。
それでもテレビなどで放映されますので「人類に最も大きな貢献をした人たち」の授賞式をワクワクしながらお楽しみください。