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「卒業」というとりあえずの「。」を越えて  谷口先生(高3学年主任・国語科)

投稿日2022/3/5

 高校3年間はあっという間に過ぎ去ったように感じますが、卒業アルバムやこれまで撮りためた多くの写真や動画を眺めていますと、数え切れないほど多くの教育活動を行ってきたことがわかります。それらをしみじみと見ながら、その都度生徒に刻まれたであろう「体験」というものの多くが、いったいどこへいってしまうのかと考えました。

 おそらくそれらは生徒の中にいったん忘れられて沈潜し、大きな地下水を形成して身内を流れ、時を経て湧水となって湧き出し、目に見える形で再び現れてくるのではないかと思います。ほとんどはきっと卒業後である場合が多いでしょう。

 人はいくつかのイニシエーション(通過儀礼)を経て、その都度人生に小さな区切りを入れながら、その前とその後という具合にわかりやすくきり分けて事後に考えられるようにしています。一段一段自分が成長している過程がよく見えるようにするためです。小さな「。」をその区切りとして入れて、「これまでの自分」を一旦くくってまとめをし、次の一歩を踏み出すために「これからの自分」を生み出すきっかけにするーそうやって私たちはいろいろな出来事を「卒業」しながら、新しい自分を「創成」しています。

 その次なる「創成」のために、皆さんのこれまでの「体験」は役立つのだと思います。それらが時を経て湧水のように湧き出すとき、それは自分をもう十分に満たしていて「経験」と呼べるものになっています。

 本校で学んださまざまな「体験」は何一つ無駄にはなりません。必ず皆さんの将来を潤いあるものにするための「経験」としていつか必ず将来の自分の前に湧き出し、参考になるはずですから。卒業というとりあえずの「。」を越え、自信をもって新たな自立のための一歩を踏み出してほしいと思います。

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