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職員室リレートーク

「『学力の構成要素の1つは、経験をもとに推測する力である』という一仮説」水野謙先生(高2担任・社会科)

投稿日2024/6/29

以下の問題に解答するためには、どういう思考経路をたどるでしょうか?

問題 下の資料A・Bを参考にして、ギリシア人が積極的に植民活動を行った理由を説明しなさい。

資料A=1月から12月までのアテネの気温と降水量のデータ

資料B=ギリシアのオリンピア付近の風景写真(山がちな風景写真)

思考1=アテネは雨が少ない  思考2=オリンピアの地は山がちである

思考3=1・2より、ギリシアの地は穀物栽培に適さない

解答=穀物を求めて、ギリシアのポリスは植民活動を活発に行った。

 以上のような思考が出来るためには、山がちな風景写真から「この土地は穀物栽培に適していない」ということを解答者自身の実生活での経験から推測出来なければならないでしょう。また、雨温図から雨が少ないことを確認して、「雨が少ないから穀物栽培に適していない」ということを、これまた解答者の経験知から推測する能力が求められます。

 この問題は、学力の一つの要素として、実生活での経験からヒントを推測する能力が求められている一例だと思います。いわゆる「思考・判断」が学力の三要素の一つに数えられている昨今は、推測能力を鍛えることは普段の学校の授業でも一層求められていくと思います。

社会科の授業をしていて(あるいは受けていて)一番楽しいのは、事象と事象の思わぬ関連性に気づいた時だと思います。そんな「ハッ」とする気分を、授業を通して味わってもらいたいと、いつも考えています。そんな「ハッ」とする経験が増えると、普段の授業が楽しくなり、学力も徐々に向上してくると私は信じています。そのためにも生徒の皆さんには、「自身の生活経験を駆使して推測する力」を向上させて欲しいです。ただ漫然と何かを経験するのではなくて、推測のリソースにすることを意識しながら日々の生活を送ったり、学校行事に取り組んでもらいたいと思います。そういう意味でも、日本学園の学校行事は貴重な経験の宝庫と言えるでしょう。

逆に我々教員側も、普段の授業や本校の定期試験でお馴染みになった【創発問題】で、そういう推測力を試す機会をドンドン増やしていければと、個人的には思っています。創造力も大事ですが、それ以前に推測力も大事だと思うからです。

 経験で得た知識をもとに、適切に推測力を働かせ、その後に問題解決的な創造をする。これが、本校で育む「創発力」だと思っています。

 

参考文献 「社会科教育の脱中心化」  2019 佐長健司

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