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「防災の日に」石井康先生(国語科・高校1年担任)

投稿日2020/10/12

 少し前の話で恐縮だが印象に残った授業を紹介す。

遡ること1月半前の9月1日、3年生の古典にて。始業式にも当たるその日は「防災の日」と称され、どの学校でも例年、避難訓練が行われる。

 今から約100年もの前に東京を中心とした「関東大震災」は甚大な被害をもたらし、被災者190万人、10万5,000人あまりが死亡あるいは行方不明になったと推定されている

 併せて流言によって朝鮮人の大量虐殺をも引き起こした。正確な人数は不明だが、虐殺による死者は震災による犠牲者の1から数パーセントに当たるらしい。

 その授業では前者「関東大震災」に関した動画を見せることから始めた。生徒達には「しばし、私に付き合われたし」と断る。前置きもそぞろに視聴させたところ全ての生徒が食い入るように見入っている。勿論、私語はない。10分程度の動画視聴後、折しよく、といったら語弊があるが、時計はまもなく震災発生時の11:58に近づいている。被害の甚だしかった浅草、本所の方角を訪ねる。「あっち側です」と生徒。「全員起立」「回れ右」「黙祷」「・・・。」「直れ、着席」この一連の動作において私語はなく、皆、機敏に行動してくれた。

 補足説明をする間、生徒の背筋はピンと伸び、私の話を聞いてくれる。その後、僅かでしかなかったが古典の授業をするもその雰囲気は例えようもなく。思いつきで取り組んだ試みだったが、やってよかったという思いに満たされた。過去の歴史と、それによって生じた事柄を過去のものとするのではなく、風化させるのではなく語り継がなければならないと結びの言葉。

 いつもは元気なあの子等の思いがけぬ側面を垣間見出来たことはよかった。こういう面を見せられたら「最近の若いもんは」などと歎くのは失礼でしかないと自らを恥づ。 

 そのクラスがその子等がもっと愛おしく思えるようになった、とある日の授業でした。

 

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