この夏だらだら病を患っているひとがいましたら、ぜひ感性を磨くためにこれから紹介する三つの美術展に出かけてみてはいかがでしょうか。先日のオープンキャンパスで表象文化研究部の生徒たちは、時間をかけて準備した『カオナシの謎を解く』の授業を、高校受験生向けに行いました。とても有意義な楽しい時間を過ごせたと思います。受験生の皆さんも積極的に手を挙げて答えていただき、ありがとうございました。
さて、本題に戻りますが、現在新宿中村屋サロン美術館で『富士山ー芸術の源泉展』が開かれています。行って見ましたが、富士山がこれだけ多くの画家の創造をかきたて、しかもその力量が問われる存在であったことを今回はじめて実感しました。本校の先輩・横山大観はもちろん、数々の文化勲章を受章した画家たちが勢ぞろい、ああでもない、こうでもないと格闘した結果描かれた、個性豊かな作品たちをまとめて見られるよい機会です。個人的には片岡球子の赤富士が好きになりました。
次に、内外の現代美術で最高峰のふたりの美術展が開催されています。国立新美術館で行われているフランス人の『ボルタンスキー展』、そして森美術館の『塩田千春展』です。現代美術ですから、印象派を見るような気持ちでいくとびっくりします。ユダヤ人虐殺で亡くなった人々の写真と電灯を手法を変えて展示したり、影絵を使ったインスタレーション、また風鈴が雪原で音を鳴らしながら揺れる大画面、赤い糸や黒い糸が部屋中を覆い、無数の旅行カバンが釣り下げたれているところをあるいていく・・・など。そこには自分の記憶の断片や自分以外の人々の存在(生と死)を感じさせるオブジェにみちみちて、驚かされます。なかなかない機会ですので、ぜひこの夏どれかひとつでも行って体験→経験してみることをお薦めします。