あれから15年かぁ・・・。
紫色の可憐な花をあちこちで目にするようになった。この花を目にすると遠い昔を思い出す。
学生の頃アルバイト先の店主の奥さんは元タカラジェンヌだった。だから男装が似合うきれいな顔立ちをしていて、当然、歌は上手かった。ところがある時、大病を患い生死の境を彷徨った。時間はかかったがなんとか日常に戻れるようになった。
卒業と共にそこを辞め、就職のために故郷に戻ったが年に幾度かはご挨拶に訪れた。それから10年経った頃、悪い報せが届いた。別の病魔に冒され余命幾ばくも無いという。すぐにお見舞いに訪れたが居たたまれず言葉が出ない。それでも引きつった笑顔で何もなかったように近況報告をするなどし、束の間の時間を共有した。それから程なくして逝ってしまった。美人薄命、然り。
告別式は「音楽葬」だった。かつての仲間が祭壇の前で途切れることなく歌を歌って冥福を祈っていた。僧侶のお経も焼香もない。沢山の花と宝塚歌劇団を象徴する歌だけ。
―――すみれの花咲く頃 はじめて君を知りぬ
君を思い 日ごと夜ごと 悩みし あの日の頃
すみれの花咲く頃 今も心奮う
忘れな君 我らの恋 すみれの花咲く頃――― ※
・・・「すみれ」。私には昔を偲ばせる少し、淋しい花。
でも今年は少しだけ前向きに捉えてみようか。
「すみれの花咲く頃」に「はじめて(32人の)君を知りぬ」。
さあ未来の始まりだ!青春は短し、学べよ若人!
※『すみれの花咲く頃』より 作詞:白井鐵造,作曲:F.デーレ