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職員室リレートーク

「1Day創発 “おひとりさま”のもたらすもの」添田先生(高1担任・国語科)

投稿日2023/11/11

 「体験」に勝るものはない、最近あらためてそう感じます。本日も中学校入試説明会が開催されますが、その場でもよくお話させて頂いている創発科の伊藤先生、先日高校1年生に「1Day創発」のオリエンテーションをしてくれました。

 私は子ども時代、親の都合で全国津々浦々、たくさんの土地で暮らしました。千葉の小さな町で生まれたあと、西は伊丹空港のそば、兵庫県。そのあと埼玉県大宮で過ごし、一気に北上、北海道へ移り住みました。いちばん長く暮らし、子ども時代の記憶が色濃く残っています。札幌に帯広、網走に函館。奥尻島や積丹(しゃこたん)半島の小さな船や潮風なんかも思い出せます。

 さて、本校では、AL的探究型授業として「創発学授業」を行っています。生徒が物事を「どのように学ぶか」という学びの質や深まりを重視し、講義ではなく発見学習、問題解決学習、グループワーク・ディベートなどを行う本校オリジナルのプログラムです。

 高校1年生では来月、「1Day創発」を行います。入学してこれまで、グループワークで「創発学」を深めてきましたが、「1Day創発」では一人で課題を見つけ、一人で現地へ出掛けて調べ、まとめをし、発表をします。

 

「君たちにもし、自由な一日があったら、どこへ行く?何をする?」

 

 オリエンテーションは、伊藤先生のそんな第一声から始まりました。自分の「好き」「興味関心」「なぜだろう?」を出発点に、課題を見つけてみようということ、「計画書」を作成しようということ、昨年度は、横浜の「アンパンマンミュージアム」へ取材に行った生徒がまとめ発表の大賞を取ったことなど、色々な説明を高校1年生はワクワクと不安の入り混じった表情で聞いていました。

 

 お話を聞きながら、私は北海道の子ども時代を思い出していました。知らない土地をずんずんずんずん歩いて小さな発見を日々楽しんでいた、“おひとりさま”力のずいぶん強かった子ども時代のことを、です。

 あの頃はスマホもなかったですし、修学旅行生のように地図片手に歩いたこともありません。ただただ、ずんずんずんずん興味の向くままに初めての土地を、町々を、野山を、よく歩き回っていました。

 「家の電話番号」と「住所」はいつもかかさず暗記していて、迷子になってもそれさえ誰かに伝えれば家に帰れると信じていました。今思えば向こう見ずなのですが、実際「元町の『エンドレス三井』というマンションはどちらの方向ですか?」とか、「迷子になりました、お電話お借りできますか」とか・・・、そんなことをしょっちゅうしていた記憶があります。
 その日々の合間には、「『ナナカマド』って『7回かまどにくべても燃えない』って言われている実だけど本当かな」と火に入れてみたり、「雪虫ってどこからやって来るんだろう」とか、「キタキツネは親子で行動する」と友達が言っていたので、小学校の帰り道に子ギツネがいたとき試しに傍の草むらに石を投げてみましたら、本当に一瞬で親ギツネが現れて追いかけてきたので一目散に逃げたりなど、せっせと「ふしぎ」について好きなだけ時間を費やしていました。

 自分の足で歩いた土地のこと、見たもの、試してみたことは、どんなに時間が経っても忘れないものですよね。中でも、函館のあの街の風景です。坂をずんずんずんずん上ってみたある日、ふぅ・・・と振り返ったとき、眼前に広がったあの風景です。眼下に函館の街の美しさが凝縮されていました。あれはハリストス正教会だったか、トラピスチヌ修道院だったか、とにかく絵葉書のような教会と教会通り、家々と街路樹、函館山、遠くにも近くにも街を彩るものたち全てを見下ろせたのでした。「坂の多い街は美しい」とよく言われますが、これは本当に本当なのだと知った瞬間でした。

 帯広で暮らすことになったとき、JR帯広駅に降り立つと、甘い香りがいっぱいで驚きました。すぐにあの匂いの正体は、名産のビート(甜菜糖)だと知りました。小学校の社会で習うより先に。都道府県の場所もよく知らない頃、山形の庄内地方に暮らす友達の家へ飛行機で一人旅に行かせてもらったことがあり、そうするとやはり山形県にだけは博士並みに詳しい子どもになったのでした。

 「体験」に勝るものはない、と思います。でも、一生のうちに行ける場所は限られているので、私は本も読みます。歩いたことのある地名が出てくればもちろんおもしろいですし、知らない場所行けない場所へも物語の中では行くことができるからです。

 

 来月の「1Day創発」、高校1年生の皆さん“おひとりさま”を楽しんで下さいね。一人で行動できる人間は、強いです。その「体験」はきっと、自分の言葉で語れる豊かな糧、「経験」になりますね。

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