『エゴン・シーレ展』に行ってからあまり時間がたっていませんが、活動を活発にするとみんなで誓った来年度に向けて、さっそく春の活動として『佐伯祐三展ー自画像としての風景』(東京ステーションギャラリー)に行きました。旧学年でいうと高2(2名)、高1(2名)、中3(1名)、大学の先輩、顧問で出かけました。私の感想は後で書くとして、まず生徒たちの感想を紹介します。
●中3 T君の感想
晩年の色彩が明るく変化していると思いました。特に異質だったのは『煉瓦焼』や『カフェ・レストラン』です。後者は全員眼鏡をかけたような目をしているのが印象的でした。
また、静物画の中で何故か強烈だと思ったのは『鯖』でした。蟹やにんじんには驚かなかったのに、どういうわけか鯖にだけ意外性を感じたのです。
●高1 A君の感想
佐伯祐三の風景画として描いた絵に作者の気持ちが深く表れているように感じました。
ただ僕が特にそう感じたのは身近なものを描いた静物画「蟹」と「にんじん」です。蟹の絵は、佐伯祐三がゆでた蟹を描いたものですが、蟹の背景が金色で塗られており、かなり明るくなっているため、蟹を描くのに興奮した気持ちが表れているのを感じました。一方にんじんは細くて弱々しい感じが出ていて周りの背景が黒に近い紫色で塗られているため、冷めた気持ちや病のことが少し関係しているのかなと感じました。また、佐伯祐三の作品を展示している壁のレンガが不規則にでこぼこになっているのにも芸術を感じました。わずか30年という短い生涯を終えた佐伯祐三ですが、雲などの細かな部分も雲そのもののように描いており、筆のなめらかさがとても目に入りました。
ふたりの感想を読んで感じ方がそれぞれ違っておもしろいなと思いました。この感じ方のちょっとした違いがおそらくはそれぞれの生徒の「得意」のベクトルが向かう方向性の違いを表しているのかもしれません。いずれにしてもそこには優劣はなく、その感じ方の違いを大事にしてどんどんいろいろなものを見て感じたり考えたりしてほしいと思います。
さて、佐伯祐三について私は長らく「平面性」を大事にしてまっすぐに建物の壁や門に向かう絵が大好きでしたが、今回の展示で初期の住んでいた身近な「下落合」の風景画に多く見られる「奥行きのある風景画」(抜ける構図)が描かれていることを知りました。また同時に縦のラインを複数配置する電信柱や樹木によって絵の構図をしっかり捉まえていることがわかりました。2回行ったフランスの合間に帰国した際、港の船を描いていますが、立体感にこだわるのではなく、あくまでも横向きの平面的な構図で船を描き、電信柱同様にむしろ複数の帆柱(縦の線)が主人公だとばかりに描いているには驚かされました。これは再びパリ並木を描くときの激しい林立へと通じているように思えました。ブラマンクをはじめユトリロやゴッホに影響を受けたとはいえ、常に身近なものを描き続けて独自のベクトルをたった30歳で見つけた佐伯を、今回あらためて好きになりました。生徒たちが気になった静物画にもそれはきっと強く現れていると思います。