3年生から進路に向けての小論文添削指導を頼まれることが多い。スポーツコースの生徒は部活動で得たことを活かしてスポーツ関係の職に就きたいというものが多い。具体的には「スポーツトレーナー」、「理学療法士」、「柔道整復師」等だ。中には器具を作り、ビジネス展開したいというのもある。どの文章にも共通して「スポーツをする人を支えたい」という強い想いが表現されている。〝なるほど〟と妙に納得しながらも、添削指導者としては具体的にどうやって?となると言葉に詰まったり、大学がアピールしていることを代弁する。そうじゃないんだよね…。10年近く前、東海大学のAO入試を受けた生徒がいた。二次試験で30~40分程度のプレゼンテーションが課せられるというかなり、ハードルが高くも幸いなことに彼には実績とビジョンがあったので1ヶ月位の準備をして堂々と臨み、無事合格に至った。今は夢を実現し、南武線沿線の鹿島田で一国一城の主をしている。
抽象的ではなく具体的、夢物語ではなく現実味を帯びたもの、大学素敵!ではなく俺のやりたいこと!を実現に近づけてくれるのが大学なんだよ…等とあれこれ指導するとみるみる萎縮していく。
今回の支部大会(11/4 vs桜修館高校)の一日は彼らの理想とするトレーナーの意義性と存在感、支えるってこんなことなんだなぁと言うことをまざまざと見せつけられた日だった。午前中はシュート練習を行い、12時頃会場入り。そこでトレーナーと合流し、細かなチェックや指示を受ける。理路整然にして簡潔。空気の張り詰め方もほどよい緊張とリラックスにある。こういった雰囲気作りはトレーナーの感性に依るものだろうが選手の不安払拭と志気向上を上手にコントロールしていった。
試合の入りこそ、もたついたものの、徐々にエンジンもかかってきて組織として上手に機能し始めた。普段、プレー時間の少ない者もどんどん出場のチャンスを得て勝利に貢献した。♯5は1年生ながら重要なポストを任された。サイズはないのだが最前線で攻防に絡んでいる。ドライブでファールをもらうと相手選手は2人が転倒するほどのあたりの強さを持つ。ぶつかられた方が平然とした面持ち。私の隣で見ていた観客から驚嘆の声。
ドリブルを少なくし、早いパス展開で相手を揺さぶりフィニッシュ!♯12 、13、8のきれいな弧を描いたシュートにまた隣から同様の声が聞こえる。♯12は前日の試合では古傷を気にするような仕種が見られたが今日は伸びやかにプレーしている。♯7の顔面強打により一時、ベンチに戻るが♯10が代役を務めた。♯6がリバウンドで脇を固めねじ込む。♯20のミドルや3P、♯15のゴール下も光った。
たくさんの応援団の方と担任に見守られ無事、東京都都大会の出場権を得ることが出来た。ただ彼らの目標はこれにあらず、あくまでも通過点に過ぎないことは言うまでも無い。次の自由が丘学園戦も準決勝、決勝も、そして本大会もやるべきこととモチベーションの高さはぶれてはならない。常にトップギア、フルスロットルで勝利へのスターダムに登り詰めなければこれまでの練習と想いは気泡に帰する。
スポーツトレーナーという仕事とは〝選手が最高のコンディションを保ち、最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートする仕事〟と一般的には定義されている。体を支えることは言うまでも無いが、精神をも護る看護師のような存在に私には思えた。一騎当千とは大げさではあるが、ずっと寄り添いサポートして下さったことで此度のチーム状況は前日の雰囲気とは雲泥の差であった。次戦も帯同してくれるとのこと。保護者、応援団、にちがくファン、指導者あってのにちがくバスケ部であるが、もしかしたら「心技一体」の実現への大きな鍵を握っているのがスポーツトレーナーであるのかもしれない。