黄昏時、練習に励む生徒を見ていたら無意識に束の間の回想に耽っていた。人間の記憶なんていい加減なもので時間と共に曖昧になっていくのに大学受験を控えたあの1年は20年の歳月を経ても忘れようもない。
寸暇を惜しんで夜中まで勉強していると、近くの港に停泊している船の汽笛が聞こえる。夏はあまり気にならなかったが晩秋から初冬の頃になると空気が澄んでいる為、その音はやけに淋しく響く。いやおうなしに私の心は不安にかき立てられる。迫り来る時間と去りゆく時間の両方に恐怖に似た思いを抱き、暫しペンの走りが鈍る。不安に克つには勉強するしかないと頭では分かりながらもこの気持ちは持て余してしまう。受験は自分との戦いとはよく言ったが孤軍奮闘していたあの頃を哀愁を帯びた汽笛の音と一緒に思い出す。。教師になりたくて受験勉強をしていた自分の姿と高い目標に向かって日々鍛錬する生徒を重ねてしまうのは彼等には失礼だったかな。逢魔時がもたらした回顧の時間は何を意味していたのか。「誰そ彼?」。昔の自分と決別せよなのか、立ち返れなのか。とっぴんぱらりのぷ?
10月下旬から約1ヶ月かけて新人戦支部大会が行われる。各支部からは上位8チームが年明けに行われる本大会に出場できる。各校、1,2年生主体の新チームになり有意義な夏を越えたことだろう。どの学校も本大会出場という目標を掲げ、初戦を迎えたことと察する。
では我等がにちがく勢はというと調整期間に入り、Winter Cup予選までの幾代日を貴重な時間として気持ちを整えつつある。過日に練習試合を横浜にて行った。フルゲーム2本+αをやりながらも選手はその時間を大切に大切に捉え、直向きにプレーをしていたと布施先生談。特にセンターが修練を積む為に行われたそれは実に大きな収穫を得たようだ。また別日に1部リーグに属する明治大学バスケ部の胸もお借りした。試合運びや体の使い方、ここぞという時の集中力は是非に学び、模倣・吸収して欲しいと思った。本番までの僅かな時間で克服せねばならぬ各々の課題は分かったはず、寸暇を惜しんで修復に励め、とも併せて思った。
今週末は仙台の明成高校まで遠征をし、いよいよ戦闘モードへと切り替わる。これらの練習試合は従来の意義性と全くことなることに気づかれたし。どのチームもにちがくのために、という思いで胸を貸してくださる。戦友というのは大袈裟だが誰もがWinter Cupに出場して欲しいという応援の心しか今は持ち合わせてはいない。だから不甲斐ない試合内容や雰囲気、心構えは無礼でしかない。結果が全ての勝負界ではあるが過程あってのそれであることを再認識してほしい。選手のにちがくへの愛校心は如何ほどのものかは分からない。しかしにちがくのユニホームを着ると言うことは看板背負っていることに他ならない。堂々たる雄志とともに感謝に心を費やしたい。
インターハイ出場の際に掲げた「恩返し」はまだ半分しか返していないので東京都1位で予選を突破することでこれまで陰ひなたなく支えてきてくださった方々に報ゆ。もう「賽は投げられた」。東京都320校の頂点目指して全国の地を踏むべく、たゆみのないにちがくスピリットを引っ提げWinter Cupへの一番乗りを決める。そして11月11日に勝ちどきの雄叫びを挙げることをバスケ部一同誓う。