日本学園 86 60 國學院久我山
― 天高く馬肥ゆる秋 ―そう思わずにはいられないほどの美しい青空が我々の上空には拡がっていた。まるで緊張の一戦を解きほぐすかのような、その爽快な青さは最後まで我々の見方をしてくれていた。
全国高等学校総合体育大会(インターハイ)、国民体育大会、そして全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(Winter Cup)は総称して高校バスケの3大大会とも云われる。特にWinter Cupは高校バスケの集大成とも称され、冬の風物詩となって久しい。
にちがくは11月3日から始まる東京都代表決定戦に挑む。初戦である國學院大學久我山高等学校を倒し、決勝リーグには駒を進めなければこれまでの日々が水泡に帰してしまうほど大切な一戦となる。それは久我山にとっても同じこと。それにしても一体、過去にこの高校とは何度対戦したのだろう。1994年にWinterCupで準優勝を遂げるような名門に下克上となる泥を付けた日はどんな空の色をしていたのだろう。誰も上を見ているような余裕はなかったか。戦績は分からないが因縁を超え胸襟を開き合える間柄にすら思えてくる。
15:20丁度にトス・アップ。負けてたまるか、負けるわけがないと気負う所から立ち上がりが懸念されたがそれは#10のご挨拶代わりのミドルシュートによってほぐれた模様。続いて#6、#5、#8が立て続けに得点を重ねていく。敵はたまらずタイムアウトをとるも早くも主導権を握ったことは間違いない。
この日、敢闘著しかったのは#7だろう。得意の3Pシュートを冷静かつ確実にゴールに沈めていく。20得点は優に超え勝利への牽引者となった。鍛えられた肉体と類い稀なる敏捷性に加え、安定した下半身とぶれることのない体幹がシュートモーションを実に正確無比に造りあげる。高く美しい弧を描いたボールがゴールに吸い込まれていくまでの数秒、見る人を魅了する。#8とはまた異なった魅力を持った選手であろう。(蛇足だがバスケスイッチのOFFの時の彼はひょうきんで常に明るい雰囲気が彼を包み込む。このギャップがまた面白い)勿論、彼が試合の流れをコーディネート出来たのは他の選手の尽力あってのことはいうべきにあらず。
前半を12点リードで終え、3ピリオド終了時は23点リード。この頃から選手交代が次々に行われそれぞれの活躍を見せる。中でも1年生である#21は、出場した瞬間にこれまたきれいな3Pを沈めてくる。最終スコアは86-60と快勝であった。
ベンチに控えしメンバーの助勢を追い風に掴み取った勝利は、熱いエールを送り続けた応援団や保護者の牽引であること、これもはたいうべきにあらず。
翌日は強豪の実践学園との一戦を控えている。明日は明日の風が吹くのだから今宵は刹那の喜びに浸るがいい。ただし切り替えの瞬間は過つこと勿れ。空の青さもまた無常なり。