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バスケットボール部

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WinterCuo予選(vs八王子学園 成立学園)

投稿日2018/11/14

――プロメテウスが天上の火を盗んで人間に与えたとき,怒ったゼウスは,人間どもにその恩恵の代償を支払わせるべく,鍛冶の神ヘファイストスに命じて粘土で女を造らせ,他の神々から女性としての魅力や美しい衣装などを授けられた彼女をパンドラと名づけて地上に下し,プロメテウスの弟のエピメテウスに与えた。このとき彼女は神々からのみやげとして1個の壺を持参していたが,好奇心にかられた彼女がそのふたを開けると,中からあらゆる災いが飛び出して四方に散った。ただひとつだけは,急いで彼女がふたを閉じたため,壺の底に残ったという。――

 

 黒星発進となった決勝リーグ。もう後がない、いわゆる「崖っぷち」。敗北によって露呈したチームの弱さは1週間で修復できようか。 

 急遽、仮想八王子チームが編成され、シューター封じの為に万全の策が講じられた。3年生を助けるべくチームは早朝練習にも余念が無く、徐々に精度を上げていく。それに応えるように3年生の頭も体もついて行けるようになった。

 迎えた八王子学園戦は緊張から始まった。もし開始間もなく2桁離されたらばメンタル面をやられると、だからそうなる前にタイムアウトをとらねば、と選手を慮る布施先生。0 – 6になった瞬間、早くもタイムアウトを取るにちがく。それによって緊張ほぐれたか6 – 6と振り出しに戻す。互角の争いの1P。このまま食らいつけとここで2P途中出場の♯9がディフェンスとミドルシュートで流れをたぐり寄せる。戦況は拮抗を続ける。相手はシューターを抑えられながらもここぞというところで実に見事に、決めてくる。嘲笑うかのような3点に苦しい境地へ徐々に追い込まれていく。

 スター選手擁する常勝チームに雑草魂が挑むことは無謀なのか。否、強いから上手いから勝てるものではないと布施先生は繰り返し言う。愚直なまでに練習を積み、自己の研鑽に怠らない者こそが勝つための権利を手にすることが出来るというわけだ。

 今、授業で扱っている教材『「する」ことと「である」こと』(丸山真男 著)の中で筆者の言うことが重なるかもしれない。例えば、〝 自由人という言葉。自分が「とらわれている」ことを痛切に意識し、自分の「偏向」性をいつも見つめている者は、なんとかして、より自由に物事を認識し判断したいという努力をすることによって、相対的に自由になりうるチャンスに恵まれていることになります。〟とある。これをバスケに置き換えると「日々、弛まぬ努力をすることによって勝利を得るチャンスに恵まれるのである、となろうか。簡単で単純に見えることから兎角、人は目を背けたがる。

 2敗の意味することは何か。望みは潰えたのか。誰もが諦め、倦怠的な雰囲気が漂う。ここまでの戦績は、八王子2勝、実践1勝1敗、成立1勝1敗とにちがく起死回生策として八王子の3勝と成立に33点差で勝つことが条件となる。依然として崖っぷち、背水の陣に変わりは無い。彼等にはまた課題が追加された。1、成立に圧勝し望みを繋げること、失わないこと 2、劣勢であってもにちがくバスケを貫き通すこと それは彼等の義務であり権利といえまいか。

 午前中の練習を終え少々早くに会場入りしたにちがく勢。会場に充る巣鴨高校は支部大会の準々決勝が行われており、東大和vs本郷 東大和南vs石神井戦ともに延長戦にもつれ込むほどの熱気と盛り上がりを見せる。うちの♯6が小春日和の元、準備している。でも、日向ぼっこをしているの?と見紛うくらいにのんびりした雰囲気が漂う。今日への思いを口にするも心なしか、穏やかでいい表情をしている。迎える一戦に向け、緊張や不安とは無縁で、楽しまなきゃ勿体ないと言わんばかりのその無邪気にも見える表情。束の間ではあったがにちがくの置かれている状況を忘れさせるくらいほのぼのとした瞬間だった。大丈夫だ、まだ希望の火は消えてない。

 2つの延長戦の余韻に浸る間もなく会場は、にちがくvs成立の試合を見るための観客と応援団で埋め尽くされる。立川で練習していた中学生も駆けつけてくれる。こんなにまでも多くの人の心を動かし、応援してもらえる彼等が羨ましくも思える。

 さあ勝負だ。the die is cast!最後までにちがくたれ!

 ♯4の堅守からミスを誘発し一気にレイアップで先制点。2㍍の留学生を翻弄しドライブで追加点を重ねる。主導権は完全に握ったか、猛攻というに相応しいプレーの連続に会場はどよめく。前半を14点リードで終え目標の33点までシナリオ通り。だが敵も然る者、じわりじわりと点差を縮めてくる。私の隣で観戦していた高校生二人の会話を耳にした。「にちがくにウィンター行ってほしいんだよな」と。

 

 目標の33点差にはほど遠かったが決勝リーグの3戦目は勝利を収めることはできた。そして高校バスケにゆっくりと幕が引かれた。ブザーの音は万感胸に迫る時の訪れであったようだ。涙に暮れる選手、ユニフォームで隠すようにむせび泣く選手、俯き動かない選手、それぞれの形で刹那ではあったが仲間達と思いを共有する。

 程なくして実践が八王子を破り東京1位の座についた報せがまことしめやかに伝わった。それによってにちがくが3位になったことを誰もが知った。

 1つの時代が、終わった。高校バスケが巣鴨高校に始まり、巣鴨高校で終わったことは偶然かもしれない。でも原点に立ち返るための場所を運命が最後に用意してくれたとしたら趣向を凝らしたその演出に感謝する。

 

 私にとって公式戦は答え合わせだと捉えている。運や体調、精神力が勝敗を左右することもあろうが原則、過程が具現化されたものが結果と思っている。もちろん答え合わせの結果、点数が及第点に達していないと気づけば即、練習内容や姿勢に反省が要される。従って勝敗も然り、内容も然りなのである。だからもし敗れても誰かのせいなどというのは勘違い甚だしく、日々の練習の質や取り組む気持ちがそれを招いたに他ならない。後悔をするのなら今日に至るまでを、となる。また反省のポイントを過つと却って傷も開く。逆に勝つことが出来れば練習の成果が実ったと胸を張れる。100点満点を目指してさらに向上すればいい。にちがくは答え合わせの結果、WinterCup出場は逃すも、3位という結果に終わった。満足、納得云々はさておき、結果の理由をにちがくバスケに携わった者は考える必要はある。今、ここで何かを糾弾するような馬鹿げた真似をする気なぞ毛頭無い。ただ、この3年間に正対して欲しい。そうすればこの結果はにちがくの次代に繋がることは間違いない。

 我々の最後の砦は「希望」だった。パンドラの元に残った唯一のもの、それも、「希望」だった。

 末筆となりますがいつも陰日向無く、応援してくださった保護者をはじめ、教職員、朋友の皆様、にちがくバスケを好いてくれた他校の方々有り難うございました。当初掲げた目標は達成することは叶いませんでしたが選手達は好きなバスケを3年間続け、こうして1つの区切りを付けることが出来ました。新チームは既に再スタートし、3年の遺した実績に追いつけ追い越せと気持ち高く練習に取り組んでいます。今後とも変わらぬご支援ご愛顧をよろしくお願いいたします。まことに有り難うございました。

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