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職員室リレートーク

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「歩く・見る・考える」 高橋先生(高1担任・社会科・山岳部顧問)

投稿日2019/2/22

生徒・・・教科書、地図帳、ノート、学年によっては統計資料
教員・・・上記の教材、授業ノート、掛地図
というのが、従来の地理授業における基本アイテムです(でした)。

 ただこの掛地図、他クラスでも同時間帯に地理の授業が入っていたりすると、そちらの担当の先生と争奪戦になるものでして、先を越されたり先輩の先生とバッティングすると、まあいやなもんです。そこで黒板にササッと地図を描いて場所を示す方式に変え、長らくこの方式でやっていたのですが、近年、GIS(地理情報システム)やICT機器の普及により、授業も様変わりしてきました。地図も写真もタブレットやPCから直接黒板(スクリーン)に映せますし、スクリーンに映した白地図にどんどん書き込み・消去、必要に応じて主題図を切り替えたり重ねて表示できたりもできます。便利な世の中になりました。

 最近は教科書や地図帳といった、従来の教材だけでなく、身近にあるものを使って地理の授業を行っています。最近良く使っているのがGoogle mapとGoogle earth。
 先日の高1の授業、南米の自然という単元ではこんな感じ。
 まず地球全体が見えるところからスタート。徐々に南米へ接近して行きアンデス山脈の場所を確認します。日本と南米の位置関係や距離、方角など、視覚的に理解できます。そしてアンデス山脈、最高峰アコンカグアを見てみよう。google earthの機能の一つである3D表示を使うと、アコンカグアの周囲を遊覧飛行さながらに見ることができます。南壁側に回りこんだところでは生徒からも「やばい、険しくね~?」と声が上がっていました。そして延々と続くアンデスの山並みには、私自身驚愕しきり。続いてアマゾン川へ移動しよう。河口のマカパという町にストリートビュー機能を使って降り立ってみます。目の前のアマゾン川は、向こう岸が見えず、水平線が見えるばかり。「これ海じゃん」と、川のスケールにびっくりする生徒も。板書や解説で済ませるより、教員と生徒が一緒に驚いたり発見しながら授業を進められそうですね。さらに、アマゾン流域の熱帯雨林の様子や、アルゼンチンに分布する草原のパンパに農場が広がっている様など、イメージをつかむ上でとても良い教材になるな、と感じています。これは便利!

 ストリートビューで表示できる範囲も目覚しく広がり、なんと世界第二の高峰、K2の頂上の景色もこれで見ることができるのには驚きました。20数年前、実際に登ったときにはそれはそれは大変で、人生であれより大変なことはそう無いと思えるほどだったのに、こんなに簡単に行けてしまうとは・・・・

 ただ、使い方次第ではとても便利なGISですが、決定的に足りないものがあります。その場の持つ空気感、「気」のようなもの。その場に行くことでしか感じられない風土が、それぞれの土地には存在します。K2の頂上の景色も、23年前にそこで見たのと同じ景色ではありますが、あの酸素の薄さ、風、陽の光、スケール、それらは現場でしか感じられないものです。実体験と疑似体験の決定的な違いがそこにあります。
 世界の諸地域の事象を自分の五感で感じ取り、考察すること最強の地理学習です。本やIT機器で情報を得たら、それで満足するのではなく、できればそこに行って、そこを歩いて見て回り、体全体で感じ取ることを忘れないようにしたいものです。

「歩く、見る、考える」

 今までも、これからも、これが地理学習の真髄だと再認識しつつ、Google earthの擬似旅行を楽しむ今日この頃。また本当の旅をしたくなってきました。次はキルギスあたりの山に登りに行きたいなぁ・・・。

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