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「8人目の文化勲章」 水野重均校長

投稿日2019/11/2

 毎年、文化の日に文化勲章の授賞式が行われます。今年は本校の大先輩である甘利俊一さんが文化勲章に選ばれました。大変名誉なことです。生徒諸君には、10月30日の朝礼で速報として大先輩の業績をお伝えしました。

 諸君にとって文化勲章と言っても、どれだけ名誉なことかわからないかもしれません。今回の文化勲章受章に当たっては、先日のノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんも同時に受章であることを考えると、日本で文化勲章が授与されることがどれだけ凄いことか理解できると思います。

 その文化勲章を受章した日本学園の大先輩を紹介すると、日本画家の横山大観、画家の鏑木清方、歌人の佐佐木信綱、中国文学者の鈴木虎雄、作家の永井荷風、岩波書店創立者の岩波茂雄、評論家の長谷川如是閑と個性的な方々が7人もいます。今回、令和の時代に8人目として甘利俊一さんがここに名を連ねることになり、本校としても重ねて大変名誉なことだと思っています。

 本校の卒業生の甘利先輩について、日本経済新聞では「数理工学分野で世界に先駆けて情報幾何学を創設し、神経回路網理論研究でも卓越した業績をあげた」と紹介され、朝日新聞では「脳の仕組みを解き明かすことからはじまり、やがて根本的な情報の研究に軸足を切り替え、脳科学と情報科学について研究を進められてきた」と紹介されています。しかしこの紹介ですぐにその業績内容がわかる中学生、高校生は少ないでしょう。これを簡単にいいますと、今まさに注目されている「人工知能(AI)の技術につながる研究と理論」ということになります。

また、受章に当たって甘利先輩は、朝日新聞に「やりたいことを好き勝手にやって、それが結果に結びついた」とユニークなコメントをされています。皆さんは、どこか身近で似たような内容の言葉を聞いたことがありませんか。

 校祖杉浦重剛先生の教えにある「人は得意な道で成長すればよい」です。まさにこの言葉のとおりコツコツと実践された成果が、世の中に認められたということでしょう。しかしただ好きなことを適当にやっていては、このような成果は出ません。好きなこと、得意なことを緻密に、かつ地道にコツコツとやり続けること。これがとても大切だと思います。それは、たとえ文化勲章という形あるものに結びつかなくても、皆さんの人生の宝となるはずです。

 さらに著作の中で「人間は多くの弱点を抱えている。これを理解した上で一回限りの個々人の人生が輝くことで社会全体が輝くような文明社会を実現すべき、人生にいとおしみを覚えないロボットとは棲み分けが生じる」と述べられており、人間味あふれた先輩の生き方の哲学が伝わってきます。

 甘利先輩は、昭和11年の生まれです。今年83歳になられているので、諸君にとっては「お爺さんで、自分たちとはかけ離れた人、別世界の人、日学が優秀だった時の人ね」と感じてしまうかもしれません。けれども、先日の日学祭で卒業生の大学生が訪ねてきて「先生、この4月から東大の大学院へゆくことになりました」と報告してくれた人がいました。東大の大学院に入るのは簡単なことではありません。そして、その報告を受けて気になり調べてみると、今現在で東大大学院、筑波大大学院、東京農工大大学院、その他多くの大学院で学んでいる最中の先輩がいることがわかりました。

 「人は得意な道で成長すればよい」という日学の遺伝子を受け継いだ先輩方が、随所で地道にコツコツと研究に励んでいるのです。日学の遺伝子を受け継いでいる生徒諸君も甘利大先輩のように、また直近の先輩方を見習って「人は得意な道で成長すればよい」を胸に、地道にコツコツと好きなこと、得意なことに真正面から取り組んで欲しいと願っています。

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